こんにちは!DENIM HOSTEL float 元住み込みスタッフのしほです!この企画では、floatを営むデニムブランドITONAMI やITONAMIスタッフの想いに迫っていきます。

ITONAMIについて、詳しくは第一弾の共同代表・山脇さんへのインタビュー記事 をご覧ください。第二弾のアパレル部門・大智くんへのインタビューはこちら

第三弾である今回は、ITONAMIの社員第一号でありfloatの支配人である草加和輝さんにお話を伺いました。

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元々社員になる前から山脇さん・島田さん兄弟(以下兄弟)の活動を知っていて、兄弟のクラウドファンディングも支援していた草加さん。

たまたまfloatの近くの別の所に用事があった際に遊びに行ったところ、丁寧なレビューを書いたことがキッカケの一つとなり兄弟が草加さんに声をかけ、ITONAMIに入ることになった。

実際にfloatに来て、二人がただ宿を作りたかったわけではなく、例えば当時DIYで作ったカフェのカウンターや、椅子の板はデニムを染めるインディゴ染料で染められていたり、ただペンキで塗ればそれっぽくなような部分にもこだわったりだとか、デニム製品を自らつくっているからこその内装だったり、二人のこだわりや遊び心、想いを随所に感じて、よりワクワクしたそう。
3E35F61F-63EE-4FE5-9BF1-C51AF2A94D97.jpeg 356.87 KB当時、宿泊施設やゲストハウスなど様々な人が繋がる場所を作ってみたい気持ちもあった草加さんにとってそういうことを実践している兄弟や、実践されている空間はとても魅力的だった。

その時の心境を草加さんは丁寧に語ってくださった。

当時コロナでお客さんが少なく、その一年前にイベントで兄弟と面識を持っていたこともあり、時間をかけてゆっくりと施設を案内してもらったり、島田さんとお互いの近況報告やら仕事に対して思っていること、今後どうしていきたいかなども含めて色々話しました。

それまでの兄弟の活動も知っていて、ITONAMI の前身であるEVERY DENIM も魅力的だなって思っていたし、二人が自分たちでEVERY DENIMという旗を立てて、全国に仲間を作ったりだとか、作ってるモノは違えど、ものづくりの職人さんや作り手さんたちとの繋がりを作っていきながら旅をしているという二人に対して、僕もそういう生き方をしてみたいなという一種のあこがれと尊敬を抱いていましたね。


自分で自分の仕事をつくって、その仕事が自分の生き方と重なる、『働いているというより生きている』という二人の在り方にすごく共感して魅力を感じていました。

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〈変わらないもの、変えたくないこと〉

floatはオープンして3年が経ち、昨年からはディナーやサウナが始まったりとどんどん変化をしていくことに伴い、お客さんのfloatでの時間の過ごし方も変わって来た。

はじめはコロナ禍だったこともあり、お客さんがいなくてスタッフ達だけで一緒にご飯を食べていたが、ぽつぽつとお客さんが来るようになり、たまたま話の流れでお客さんと一緒にご飯を食べるようになった時期があった。

2020年の冬とか2021年になってきて、その時の話の流れで「僕たちスタッフもこれから夕食なのですが、ご一緒にいかがですか?」っていう話になって一緒に食べることがちょこちょこありました。その体験でお客さんも満足してくれてるのが伝わってきて、僕たち自身も楽しかったし、当時僕は住み込みだったから、お客さんと一緒に暮らすっていうのが良いなと思って、2021年入ってチェックインの際のお客様の雰囲気を見て、こちらからお声がけするようになりました。わざわざ部屋にノックしに行って、「今夜こういう夕食をつくるんですけど一緒にどうですか?」みたいな。それで、「あーじゃあ是非」となったら一緒に食べてましたね。

そのあたりからfloat周りで移住や二拠点生活をはじめる人が増えたり、floatに集まってくれる人たちが増えて、floatファミリーというLINEグループが気付けば勝手に出来ていたり、常連のみんなが出来始めたのが2021年。2022年の春ぐらいまではそんな感じだった。

2022年の春からサウナが始まったり、その後ディナー営業が始まったということもあって、施設にお客様が常にいらっしゃるようになって、そこから少しずつ常連のみんながゆっくりここで濃い時間を過ごしたり、以前のようにお客様と一緒にご飯を食べる機会が少しずつ減った。
597A907B-4591-4A32-A76A-6C25038227F8.jpeg 284.01 KBそんな変化の中でも草加さんの中で変わらないものは、ここに来る人たちがただ心地良く過ごして欲しいというシンプルな想いだった。

僕は、この瀬戸内海や瀬戸内の島々、王子ヶ岳という自然に囲まれたこの宿に、なんらかの理由を求めて来てくれる人たちに心地良く過ごして欲しいというか、その人たちが「ここでの時間が心地良い」と思ってくれるのであれば、それだけで良いと思ってます。一緒に食卓を囲むあの時間も楽しかったんですけどね。宿泊業なので当たり前なんですけど、それは変わらずあることですかね。

その中で僕たちが提供できるものが年々変わって来た感じですね。一緒に食べるという家みたいなアットホームな雰囲気から、今度はディナーとして美味しいご飯やワインを提供するという風に、満足してもらうためのこちらの価値の提供の仕方が変わっただけで、その根本にある想いは変わらずにあります。


あと変わって欲しくないものは、兄弟が体現していることだと思うんですけど、「こういうことをやりたい」、「これができたらもっと楽しくなるな」という好奇心を持ち続けるということですかね。

マーケティング的に「今はこういった需要があるからやろう」というより、もちろんそういう視点も大切で、他のメンバーもそういう視点を持ちつつやっているとは思うんだけど、自分たちの「つくりたい」「こうしたい」という気持ちを追求し続けることは変えたくない。ずっと持っておきたいし、そういう気持ちが純粋であればあるほど、きっとそこに人が集まって来ると思います。

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EVERY DENIMだって、自分たちが届けたいと思ったから最初はデニムのメディアから始めて、自分たちがつくろうと思ったからオリジナルのデニムをつくって、47都道府県の旅を終えた後に自分たちも産地として外の人を迎え入れたいという想いがあったからこそ、このfloatも生まれた。

そして結果として、たくさんの人が全国から足を運ぶ場所となっただけでなく何度も訪れてくれる常連さんができ、昨年オープンして3年目を迎えた。

日々の忙しさの中でその想いが見えなくなってしまったり、置き去りになってしまうと、自分の仕事に対しての納得感が薄れてしまうし、それは自分にとっても周りにとってもあまり良い影響を与えないと思うので、難しいけれど純粋な気持ちや好奇心はやっぱり大切にしていきたいですね。

実は草加さんがおっしゃっていた「やりたい」「こうなったら楽しそう」という自分達のポジティブな想いをもって仕事をするという話は、以前私が山脇さんとお話しした際に山脇さんが口にしていたこと。   

EVERY DENIMから始まった価値観をずっと守り続け、代表兄弟二人だけでなく、スタッフ達もその価値観に心の底から共感して同じ想いで歩んでいることがITONAMI全体としての想いの純度の高さを生み、手掛けるものに宿る心地良さを生み出しているのだろう。
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〈想いの純度を保つ〉

難しいことに、この『想い純度』は保とうとして保てるものではなく、気持ちでそっちに持っていこうとしてもなかなかうまくいくものではない。草加さんはこの純度を保つために自分の行動とそれに対するお客さんのリアクションでエネルギーを補充しているそうだ。

僕は数字というよりは、目の前のお客様に出来る限りのことを提供することで、お客様が満足してくださったり喜んでくださったりして、例えばそれで直接声をかけていただいたり、SNSの投稿やレビューなどで「楽しかった」だったり、「絶対また来ます」だったり、そういう満足の気持ちが伝わった時にすごくエンジンがかかります。
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想いの純度を下げないために行動するってなかなか難しいんだけど、自分が純度の高い想いを持ってした仕事に、何らかの形でリアクションが返ってきたら、それは保たれたりもしくは高まったりします。だから逆に、自分にそういう仕事が出来てなかったら、どんどん想いの純度も下がっていくとも思います。

自分の身体はひとつしかないし、時間も限られているから、毎回全員に出来ているかって言われたらそうじゃないんだけど、例えばカフェに来たお客様と宿泊のお客様ではこちらが取るアクションも違うように、こちらが全部の時間を使ってその方に何かする必要はなくて、さっき言ったようにお客さんが居心地が良いって感じてくれれば良い。

そうやってひとつひとつ自分で考えながら行動してお客さんと接していきたい。


floatのバックヤードにはお客さんからの手書きのメッセージが貼ってある。こういったお客さんからの心のこもったメッセージによって、草加さんの想いのこもったホスピタリティも日々磨かれる、というあたたかな循環が生まれているのだろう。



〈もっと、ちゃんと、届けたい〉

今は、ディナー営業でワインを出してる身なので、もっとワインについて勉強したいなと思ってるし、岡山や児島の姿をお客さんにもっとちゃんと伝えられるようになりたいです。

まだまだ知らないことも多いし、伝えているものがまだ粗い。もっと深く掘り下げていって、その分伝えられる内容の質をあげたいし、それによってお客さんがより喜んでくれるだろうし、次のコミュニケーションにも繋がる。だからもっと知りたいし、学びたい。

昨年はfloatでも取り扱っている新見市のワイナリー・domaine tettaさんにお邪魔させてもらって収穫のお手伝いをさせていただいて、より深くtettaさんのことやワインについても知ることができました。

それをきちんと伝えられるようにもっと調べないといけないんだけど。備前焼もそうだし、うちのディナーでも取り扱ってるお味噌もそうだし、岡山のどこどこではこういうものが作られていて、できればなぜそれがそこで作られるようになって、他の地域ではこうだけどここではこういうやり方で…っていう知識、プラス実際に自分が見に行って知ったものを、お客さんが行きたくなったりイメージ出来るように伝えられる伝え手になりたいですね。
   
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floatに来て僕たちとお話しして、そこから二拠点生活を始めたり、移住をしたという方もいたり、自分がしたことによってそういった行動の一因、理由の一部になり得る仕事でもあるから、伝える側としての責任も考えつつ、ここでの時間を楽しんでもらうために、僕にできることをやっていきたいです。

移住して来てほしいとか相手に対してこうなって欲しいっていうのはそんなに思っていない。

もちろんそれで移住して来てくれたり、ここで過ごした時間で何かを感じ取ってまた次の行動がいい方に変わっていくのであれば、それはひとつのやりがいでもある。

ただそれよりも、ここで過ごす時間をもっと楽しんでもらうためにもっともっと色々学んでいきたいという。


〈懐かしい安心感と新しさがある場所に〉
そんな草加さんが思い描く今後のfloatはどんな姿なのだろうか。最後にfloatのこれからについて伺った。

絶賛変革中のfloatですが、今後どうなっていって欲しいかは正直わからないけれど、またいつでも帰って来て欲しいなっていう気持ちがあるので、「ただいま」のあいさつが多い宿になってくれたら嬉しいなとは思いますね。
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一年に一度でも二年に一度でも思い出して、また行ってみようかなって帰って来てくれたら嬉しいし、帰ってくる度に「あ〜、帰って来たな」っていう安心感を感じて欲しい。そして、今はサウナやディナーがはじまったみたいに、常に新しい発見がある場所にしたいですね。

敷地もパツパツになってきたから何ができるか分からないけれど、この中だけで完結しなくても児島、倉敷、岡山県内とか瀬戸内エリアとかで新しい楽しみ方を知ってもらえるように、僕も色々学んでいかなければと思っています。


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私自身初めてfloatに足を踏み入れた時に感じたのは心地良さでした。

それは自然に囲まれているからだけでなく、それよりもここで時間を過ごす人たちがみんな自然体で純粋に会話を楽しもうとしていたり、料理を楽しんで欲しいという想いが詰まった空間だったからこそ感じたものだと思います。

インタビュー中に印象的だったのは、草加さんの想いがシンプルで優しいということ。

「僕たちが素敵な時間を提供します」という押し付けではなく、「お客さんがここでの時間をその人らしく気持ち良く過ごせるように」と祈るような柔らかさのあるホスピタリティを感じました。

お子さんの初めての外出でfloatを訪れてくれたご家族には、大切な日だからと趣味のカメラで写真を撮ってプレゼントしてあげたりと、ITONAMI のスタッフや常連さんの間でも草加さんのホスピタリティの素晴らしさは有名な話。それはまさに草加さんの人柄だからこそ生まれるものなのでしょう。

floatに流れる心地良さの秘訣は、支配人・草加さんのもつシンプルなあたたかさにありました。