こんにちは!DENIM HOSTEL float  元住み込みスタッフのしほです!この企画では、floatを営むデニムブランドITONAMIやITONAMIスタッフの想いに迫っていきます。

ITONAMIについて、詳しくは第一弾の共同代表・山脇さんへのインタビュー記事をご覧ください。

最終回である今回は、飲食部門を担うfloatのシェフ・酒井楓さんにお話を伺いました。

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宿を営む中で地元岡山の食材を使っておもてなしをしたいという想いから、飲食部門の拡大に伴い、2022年の4月からITONAMI に参画した酒井さん。

現在ではカフェ営業や金土日の朝食・ディナー営業で美味しい料理をお客さんに振る舞っています。

そんな酒井さんへのインタビュー、今回はfloatの食について迫っていきたいと思います。

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酒井さんのfloatでの一番最初の大きな仕事は「森、道、市場(愛知県の野外フェス)」での出店だった。4月に入社して森、道、市場が5月という、新しい環境に入ってすぐの大きなイベント。「あれが一番大変でしたね」と酒井さんは言う。

瀬戸内のものを使うことをテーマに、メニューはたこめしおにぎり、森林鶏の鶏めしおにぎり、牡蠣出汁クラムチャウダー、瀬戸内レモン鶏白湯スープを提供した。

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アクシデントに見舞われつつもイベント3日間を走り切り、次の大きい仕事は8月から始まったディナー営業だった。

ディナーのテーマは島田さん山脇さんと話し合って、岡山の食材を使うということと、宿ならではということで『寝かせ料理』にすることにした。

寝かせ料理とは、食材を熟成させたり、何かを漬け込んでマリネしたりする調理法のこと。

岡山の食材とは言っても、floatでは、例えばルーラルカプリ農園のチーズなど、この土地に来ないとなかなか出会えないものが使われている。

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検索しても出てこない岡山の食材などを使ってますね。例えば、「岡山の食材」で検索したら葡萄とか桃とかばら寿司とかそういう物が出て来るけれど、ここfloatに来たからこそ色々わかるというか食べてもらえるものにこだわっています。

あとは、こだわりの食材プラス、生産者の方との繋がりがあるものも多かったりしますね。例えば、島田さん山脇さんが旅してる時に出会った生産者さんたちが作っている食材を使ったり、ディナーで扱っている奈義町の豊福牛は元々草加さんが奈義町で働いてたこともあり「美味しいから使おう」という流れになって、実際に牧場に行ったりもしました。






<進化し続けるスパイスカレー>

floatのオープン当初からあるスパイスカレー。今では辛さが選べたりトッピングも豊富だが、そのオプションが追加されたのは去年の夏からだったそうだ。

元々辛さの素のスパイスは島田さんが新潟土産で買ってきてくださったもので、スタッフが賄いでカレーに混ぜて食べてたんだけど、「これめっちゃ美味しいじゃん!」ってなってメニューに入ったんですよね。うちのカレーはマイルドだから辛さがあってもいいんじゃないかということで。
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チーズも賄いで入れてたのが最初。トッピングのたまごも週末だけだったんだけど、通常のメニューになりました。辛さが追加されたことで、ラッシーもあった方がいいよねっていう話になって、見た目も可愛くて季節感のあるものということで季節のりんごと甘酒のラッシーが生まれたんですよ。


賄いからヒントを得て進化するメニューたち。「賄い大事よ」と酒井さんは笑顔で話していた。

常連のお客さんから「来るたびにカレーが進化している」という声をたくさん聞く。そうやって伝えてくれる人がいるからこそもっと良くしたいと頑張れるそうだ。





<思い切ったら吉日でスタートした朝食>

朝食を始めようと思った理由は、急にやらなきゃと思い立ったからだと酒井さんは言う。

朝食も無理やり今週末から始めますって言って始めたんですよね。始める3日前くらいに島田さんに「朝食今週末からやります!」って笑。急にこう、やらなきゃ!って思い立った時があって、なんか分かんないんだけど、8月にほぼ全部屋が埋まってて、1人2人のお客さんのために朝早くからやるのは大変だけどこんだけお客さんがいるならやる価値があるんじゃないかと思って。

元々朝食は要望が多かったのもあってやりたかったんですよね。ここにくる常連さんとか、泊まるのを検討してる人に朝食ってありますか?って聞かれることも多くて、ちょうどラウンジのカウンターが出来上がった時期で、そこでワンオペでも出来るなと思ったタイミングだったから思い切って朝食を始めることにしました。

メニューは以前草加さんがタコ飯、あら汁と目玉焼きを出していたものをベースに、ちょっと野菜と果物をつけたりした。
927AC951-77C5-4A3E-AF8D-60D1FD8F9E38.jpeg 295.78 KBそれまでのカウンターはもう少し狭く、台もステンレスではなく木で、ものもごちゃごちゃしていたため、料理向きではなかった。それらが改善され、「料理できるぞ」と気持ちに発車がかかったそうだ。

結構私がキッチンに入ってることが多くて、お客さんと話さない時もあって、だからカウンターで朝食をやれば絶対に顔が見れるからコミュニケーションを取れるじゃんという気持ちも後押しになりましたね。




<ホステルとしての食体験>

せっかく岡山に来たなら岡山ならではのものを食べてもらいたいという気持ちはありますね。今は食事を提供して、食材の説明までしてるんですけど、中々そこまではしない飲食店も多いから、食べるのとプラスでこの食材はどこで作られてるんだとかこういう食材が岡山にあるんだっていうことを知ってもらいたいです。

そして、食事を提供する中で色んな人の話を聞くのが楽しいと話す酒井さん。

会話があるとこっちも仕事感がなくなるというか、旅好きなお客さんもいたりして、結構お客さんに地方の宿や美味しいご飯屋さんを教えていただいたりすることもあって、それも楽しいですね。

ホステルと聞くと、ホテルとはまた印象が違い、正直料理のクオリティーもそこまでなのでは?という考えが頭をよぎってしまうかもしれないが、floatの料理はそんなことを微塵も感じさせないぐらいクオリティーが高く抜群に美味しい。

そして美味しいだけでなく、ホステルならではのお店の人とお客さんとの距離の近さという良さも併せ持っている。

スタッフが見えるホステルだと思いますね。食事中こんなにもスタッフと喋れる宿ってなかなかない。floatには絶妙な丁度いい距離感があると思います。

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しかし、最初の頃は戸惑いも多かったという。

最初は大変でしたね。接客の仕方がわからなくて、floatは飲食店とも違って、ホステルやゲストハウスならではというか。私自身ホステルやゲストハウスに行ったことが無かったから、草加さんとかを見て、半年ぐらいでやっと気楽に、変に緊張せずに話せるようになってきました。

前職は中食(接客などの無い、調理場での調理)の調理をしていたため、お客さんと話す機会がなかったという酒井さん。floatに来てからというもの、インタビュー時までは住み込みで働いていたこともあり、常にお客さんやスタッフと会話する環境へ移り、自分自身にも変化があった。

仕事をしている時だけでなく普段の自分も変わってきて、「みんなが喋る人だからみんなに合わせてるのか、自分がそうなってきたのかよく分からない」と話す。

もともと1人で夜散歩したり、1人で行動するのが好きでそういうことが多かったんだけど、こっちに来てから、いくら部屋に居ようとも人の空気を感じて完全に1人っていう瞬間はなくて。昨日も朝散歩しながら昔の自分を思い出してました笑。昔ってこんな感情だったってふわって湧き上がってきて、ここにくる前と後で変わったなぁってふと思ったりしますね笑。





<今後酒井さんがやりたいことって?>

最後に酒井さんに今後やっていきたいことをお聞きした。

もっとカジュアルに食事を楽しんで欲しいですね。コースもいいけどもっとアラカルトがあったり、前菜メイン色々あって、今日の魚があったり色んなものが選べるビストロみたいな感じが良いですね。

宿で全部済むって良いことですよね。特にここは児島の中心部から離れてて外に行って帰ってくるのになんだかんだ時間がかかるし、サウナに入って夜ご飯を食べて寝て朝ごはんを食べて、っていうのが一番楽しい過ごし方なのかなって思います。ホステルステイがもっと充実するように出来ると面白いかなと思います。

イベントもやりたいですね。例えば、品種とかブランド縛りでワインの飲み比べとか岡山のお酒のイベントとか。来たら泊まらないといけないし、泊まってる人がそれに興味があるかどうかも分からないから難しそうですけど、その日は宿泊を止めて、来た人はドミトリーで雑魚寝スタイルっていうのも面白そうだなと思います。

ディナーやランチ、カフェの営業体系に縛られず、飲食部門だけでPOPUPもしたいですね。何かfloatでしか食べれないような、「floatといえば〇〇」というメニューを作っていきたいです。立地的にもふらっとカフェ利用は難しい場所だから、わざわざ来たいと思ってもらえる何か。ディナーは宿泊ありきだけどカフェはもうちょっと何か出来そうですね。

あと個人的には深夜バーをやりたいですね。サクッと飲める場所的な。仕事としてじゃなくて本当にゆるーく、カウンターの中にいるだけで私も一緒に飲むみたいな笑。高い椅子を置いて、カウンターを開放したいですね。お客さんと同じ視点で飲みながら、会話をしながらの営業も憧れます。

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私がfloatに住み込みをしていた際に印象的だったのは、ディナーで食事を提供しながら、お客さんとの会話を楽しんでる酒井さんたちの姿でした。

宿という一期一会の場所で、岡山のことやお客さんの出身地のこと、旅のこと、食のこと、お酒のことの話に花を咲かせていた光景が今でも心に残っています。それは、ただ美味しいご飯とお酒を提供するだけでなく、floatでしか出来ない食体験だと思います。

朝早くから夜遅くまで飲食部門を支える酒井さん。

お客さんが楽しめる食のバリエーションが増えたり、常連さんが来るたびにカレーが進化しているとおっしゃるのは酒井さんの行動力があってこそ。

ハードワークなのにも関わらず、インタビューの最後、今後やりたいことをお聞きした際に沢山のアイディアが溢れ出てきたことに圧倒されました。

最近では宿泊者以外でもディナーを楽しめるようになったりと着々と新しいことが生まれています。

そんな酒井さんが活躍するfloat飲食部門の進化がますます楽しみです。