こんにちは!岡山の泊まれるデニム屋ことDENIM HOSTEL float の元住み込みスタッフのしほです!この企画では、floatを営むデニムブランドITONAMI やITONAMIスタッフの想いに迫っていきます。

デニムブランドから宿・カフェ・サウナの複合施設を営むITONAMIについて、詳しくは第一弾の共同代表・山脇さんへのインタビュー記事 をご覧ください。

第二弾である今回は、主にアパレル部門やオンラインコミュニティoffloat のコミュニティマネージャーを務める能瀬大智くんにお話を伺いました。

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お喋りが大好きで、みんなから大智くんと呼ばれ親しまれる彼は、前職の転勤により岡山県倉敷市に移住。金融、フリーランス、広告業界を経て、今年7月にITONAMIに入社した。社員としては3人目、現段階では一番最後に入ったメンバーである。

今回は、そんな大智くんの目線からITONAMIを紐解いていく。



〈気付いたら手伝っていた〉

大智くんとITONAMIとの出会いは昨年4月。東京から岡山に遊びに来た友人に、行ったことはないけれど、素敵な宿があると、ITONAMIが手がけるDENIM HOSTEL float(以下float)を紹介したことがきっかけだった。

車を持っていなかった友人を迎えにfloatに行った際にスタッフ達と意気投合。岡山に来てここで過ごす時間が一番楽しくて、それからほぼ毎週末はここに足を運んだ。

はじめは岡山に引っ越してきたばかりで、友達も居なかった。社員の草加さん以外は同じように県外から来た人で、ベクトルは違うけどみんなやりたいことがあったり、目標に向かっている人が多かったのもあって、自分もその時期、転職を考えていたから、ここに来たら何か結論が出るかもしれないって思ったのもあったけれど、それよりみんなと話したり過ごしている時間そのものがすごく楽しかったんですよね。

去年はコロナもあって空室も多く、遊びに来たら空いている好きな部屋使って良いよ、という感じで毎週末ここで過ごしていた。

そこで、しょっちゅう住み込みスタッフの子達と遊びに出かけていたし、たまにお客さんの接客をちょっとしたりとかも。冬ぐらいの頃は電話も取っていて、そうやって気付いたら途中からはお客さんという立場よりは自分もお客さんを迎え入れる立場になっていった。

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まだここで働いていない時期に、自分がフリーランスで時間に都合がつきやすかったこともあり、代表の山脇さん島田さん兄弟(以下兄弟)がITONAMIのイベントで県外に足を運ぶのに誘われて一緒に行ったり、兄弟と一対一で時間を過ごす機会があった。

そうやって時間を共にしてITONAMIのことを知っていくうちに、宿としても人が集まる場所として魅力的だと思っていたけれど、ものづくりに対する姿勢や製品、プロジェクトにも惹かれていき、いつか一緒に仕事したいとも話をしていた。

一緒に仕事をする前段階で、「一緒にオンラインコミュニティをやらないか」と声を掛けられて、コミュニティマネージャーに就任。

そして、2022年7月に正式に社員としてITONAMIにジョイン。現在では、引き続きコミュニティマネージャーを務めつつアパレル担当として主にfloatに併設されたショップでの接客やPOPUPでの製品販売、再生デニムプロジェクト『FUKKOKU』 、そして宿泊業のサポートまでマルチにこなしている。

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〈見えないその先へ、想いを馳せる〉

もともと大学時代にアパレルでアルバイトをしていたほど服が好きで、昔はシーズンごとに服を買い換えていた大智くんだが、兄弟と時間を過ごす中で徐々に自分の中での価値観の変化があったという。

大量に服を買って着なくなったら売るということをやっていたけれど、兄弟からこういう作り手さんがいるとか色々教えてもらって、そういう人達のものづくりを見ているうちに、本当に良い物は過度に高いわけではなくて、良いものづくりは適正な価格で販売されていると知ったんです。

それまでブランドの服を形やデザインが良いという理由で買っていたけど、それだけが『良い』製品じゃないんだと気付きましたね。


ITONAMIの「FUKKOKU 」、「fukuen 」、「服のたね 」といった各プロジェクト全てに共通しているのは、「一着の服をどれだけ長く愛着をもって大事にできるか」と「自分たちがものづくりの当事者になっているか」ということ。

そんな価値観に触れていく中で、大量に買った服をシーズンが変わって着なくなったら売るというサイクルを大学生の時から数年続けてきたけれど、綺麗に着て売るときの金額を考えることって「買っている」と言うより「レンタルしている」に近いなと虚しさを感じるようになっていきましたね。

それからは、服や食器を買うときは、そのもの自体のバックグラウンドを知ってから買うようになった。

自分にとって、愛着をもってモノを大切にするのに大事なのは、誰がどういう思いで、どういう場所で、どんな風に作られたかというバックグラウンドをしっかり知ること。

それが現在のアパレルの販売スタイルにも影響を与えている。

野菜の生産者の顔が見えると安心するのと同じで、服も生産者の顔が見えるというか。量販店でただそこに平置きされている服からはそういう背景は分からないけれど、どういう人がどういう思いでだとか、うちのものづくりに対する姿勢や考え方を伝えて、それが心に刺さったお客さんに製品を手に取ってもらえれば嬉しいです。
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〈『良い』ものづくりとは〉

自分にとって良いものづくりだと思うものは、それに安心感を感じるもの。

服でいくと、よく行く服屋さんがその一例。そこは、製品について事細かに教えてくれて、マイクロスコープで繊維まで見せてくれるセレクトショップらしい。

単に製品表示を見てくださいではなく、この割合がこうだからこういう風合いになるというようなところまで事細かに説明してもらうと、単に形とか見た目が良いとかじゃなくて、それ以外の部分でもこの製品良いなって刺さって、モノに対して安心感が生まれる。

マニアックだからそこまで言わなくてもいい話かもしれないけれど、そこまで言ってくれることで自分には安心感が出る。

安心感とは、それについて説明してと言われたとき、詳細にそれについてちゃんと語れることなのかもしれないです。

売るための製品ではなく、ものづくりやその製品に真摯に向き合って生まれたものだということを感じることで生まれる安心感。

製品そのものにとことん向き合って、どんどん良くしていきたい、アップデートしていきたいという作り手のプロ意識を感じるようなもの。

そういう風な突き詰め方をした服の価格は過度に高くない。そういうものを選び取っていく審美眼は最近肥えてきたという。
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〈代弁者としての販売員〉

一番重要なところは、購入してくれたお客さんのうち、「なんかこの製品いいな」、「ITONAMIがやっているものづくりっていいな」、っていうぼんやりとしててもいいんですけど、その『いいな』という思いを想起させることなのかなと僕は思ってます。

もちろん会社として一定の利益は出さないといけないけれど、単に売れば良いということではない。

そういう風に思ってもらえるからこそ購入に繋がったり、もう少し大きい話でいくと、デニム製品とか、地方のものづくりに興味をもってくれる人が増えればそれが一番幸せですね。

それが巡り巡って自分たちの売り上げに戻ってくるし、どこまでいっても対人とのコミュニケーション。どれだけ自分たちの熱量を伝えられるかが大切。

モノには原価があって、そこから粗利が乗って製品の小売価格になる。自分としては、その付加価値が単に自分たちに入る利益という考え方よりは、自分たちがそのものづくりの過程の説明をすることまで含めた金額だと捉えています。

服って原料の綿の生産から販売まで考えると、出来上がるまでに関わる人数がめちゃくちゃ多い。そういった人達の想い届けられるのが一番最後であり、唯一お客さんとコミュニケーションを取ることが出来るのが販売員なんです。

だから販売員のミッションは、そういうところまで伝えること、どれだけそれを代弁できるか。そこが大事だと思っています。

入社してから3人のお客さんが、「お兄さんの熱意に押されて買いました」と言ってくださった。

それは、買って欲しいの押しつけじゃなくて、事細かに服それ自体のことや自分たちがどういう思いでものづくりをしているのかを丁寧に話してくださって、それに感銘を受けたとのこと。

そういうお言葉をいただいたとき、自分がそうしたいと思ってやったことが、この人にちゃんと届いたんだなってすごく自分の中でやりがいを感じます。


925E3B15-B575-43DC-BC11-6909E65B2B9C.jpeg 1.22 MB▲広島ポップアップにて



最後に大智くんに今後の展望についてお聞きした。

今後やりたいことはめちゃくちゃある。個人としては、自分主導で製品開発もやりたいし、今、自分主導で進めていて、世の中に形として出せそうなものがある。それが実現されたら、自分が手掛けてたもので世に残るもののひとつ目だからすごく楽しみです。

ITONAMIとしては、普通の綿じゃなく、ナイロンやリネンの製品など、オーソドックスなデニム生地の製品じゃないものも扱っていて、素材にこだわって作っているプロダクトが多いので、そういう感じで色々新しい要素も取り入れつつ、バックグラウンドも大事にして、ITONAMIの良さに共感してくれる人やITONAMIの製品ってこんな良さがあるんだと思ってくれる人をもっと増やせるよう、もっと発信をしていきたいです。



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インタビュー中、ここには載せきれなかったほど、どんどん話が展開されていきました。大智くんが本当に大事にしている価値観をもって仕事に向き合っているからこそ、次々に熱の籠もった思いたちが湧き出てきたのだと思います。

floatにあるITONAMIのショップは、アパレル独特のプレッシャーが無く、心地良い。それは「買って欲しい」という気持ちより、それよりも目の前の人ときちんとコミュニケーションを取りたいという思いを感じるから。

この服が生まれた背景や自分たちの思いを知って欲しい。服という共通言語を介してお客さんとお話をしたい。

モノそのものに対して愛着をもって長く大事にして欲しいという兄弟の思いを二人だけでなくスタッフ全員が持っていているからこそ、そういった空気がITONAMI全体に流れているのでしょう。

最近では、floatの宿泊者向けに、滞在中好きなITONAMI製品をひとつ身につけて過ごすことができる『HAKU 』というサービスが始まり、気軽に彼らの大切な思いが籠もった製品に触れられる機会が増えました。

大切な想いのもと、活動の幅を広げているITONAMI。

彼らの思いを「いいな」と感じてくれる人達が、ひとりでも多くITONAMIと巡り会うことを祈っています。